2014年02月22日

スラムダンクの続編妄想#402 卒業




3月上旬



この日、県内の多くの高校では卒業式が行われていた。







「……さーん!!」



「ん…?」



キュッ



男が5、6人で歩く集団の元に駆け寄る



キュッ



清田 「牧さーん!!」



牧 「清田…」



キュッ



清田 「ひどいっすよ。先に行っちゃうなんて」



牧 「…?」

(先に? なんのことだ)



清田 「牧さんに一番におめでとうを言うのはオレって決めてたんすよ」



牧 「……」

(そうなのか…)



高砂 「清田、お前それよりさっきなんで体育館にいなかったんだ?」



清田 「え…?」



武藤 「そうだぞ。バスケ部は卒業式が終わったらそのまま体育館に残るようにって言われてただろ?」



清田 「…!」

(しまった!…そういえば、真弓がそんな事…)



宮益 「神や西堂達とはもうさっき会ってきたぞ」



小菅 「あぁ。そういえば監督がまた清田がいないって怒ってたな」



清田 「なっ!!」



牧 「フッ…清田。オレに会う前に会わなきゃならんやつがいるんじゃないか?」



清田 「!!!!」

(神さんに…謝らないと…!)







海南大付属高校



牧、高砂、武藤、宮益、小菅らを始めとする3年生達は無事卒業を迎えていた。



キュッ



廊下を歩く3年生



「………」



宮益 「これで、牧やみんなともお別れか」



牧 「どうした、みや。急に寂しくでもなったのか?」



宮益 「いや…そういうわけじゃないけど…」



高砂 「でも確か、みやは医大に進学するんだよな」



宮益 「あ、あぁ」



牧 「そうだったな…」

(確か…スポーツ医学の研究をするとかいってたな)



高砂 「それに比べると、オレたちは大学でも会えるからな」



武藤 「あぁ。進学はバラバラだけど、試合で顔を合わすもんな」



小菅 「正直、牧がいる深沢大とは会いたくないけど」



武藤 「それもそうだな」



宮益 「……」



すっ



肩に手が置かれる



宮益 「牧…!」



牧 「どうだみや。海南でのバスケはいい思い出になったか」



宮益 「…!」



「………」



「………………」



「もちろん…!」



牧 「フッ…そうか」



宮益 「…?」



キュッ



牧が皆の前を歩き出す



「オレも…お前とバスケができてよかったぞ」



宮益 「…!」



牧 「それに、高砂、武藤。お前達も一緒だ」



高砂・武藤 「!」



小菅 「……」

(オ、オレは…)



牧 「常勝、王者…このプレッシャーを皆と背負えた事を…オレは誇りに思ってる…!」



高砂 「牧…!」



牧 「全国でタイトルはとれなかったが、この経験はオレたちのこれからの糧に必ずなるはず」



武藤 「…!」



牧 「次会うときは敵同士になるが、常勝の名に恥じない戦いをしよう」



高砂 「…!」



武藤・小菅 「!」

(しまった…さっき余計な事いっちまった)



牧 「…そして、みや」



宮益 「!」



牧 「オレたちの誰かが怪我をしたら…力になってくれよな」



宮益 「…!」



「………」



「………………」



宮益 「あぁ。必ず!」



キュッ



前を向き、再び歩き出す牧



「………」

(高校生活も、これで終わりか…)



キュッ



そのまま窓の外



バスケ部が練習をする体育館を見つめる



「………」



「………………」



牧 「ん…?」



体育館入り口



牧達が歩く校舎を見つめる男の姿



牧 「…!」



すっ



牧の視線に気付いた男が深々と頭を下げる



「………」



「………………」



牧 「フッ…」



すっ



軽く手で合図を送り、何もなかったかのように歩き出す



牧 「もう一人いたな…」



宮益 「?」

(牧…なんか言ったか?)



牧 「……」

(仙道意外にも…尊敬できる選手がこんなに近くにいたとはな)







(任せたぞ…神)












「ありがとうございましたーっ!!!!」



キュッ



一斉に頭を下げる緑色のチームジャージーを着た選手達



キュッ



藤真 「頼んだぞ。伊藤」



伊藤 「はい…!」







翔陽高校



ここでも一つの時代を築いてきた3年生が卒業を迎えていた。







花形 「藤真、3年間…本当感謝してるぞ」



永野・高野 「あぁ。オレもだ」



長谷川 「……」



コクッ



黙ったままその場で頷く



藤真 「みんな…」



花形 「それに、来年の監督の手配までしてやるなんて」



高野 「あぁ。本当、藤真には頭が上がらないぜ」



「………」



「………………」



藤真 「伊藤に、オレと同じ思いをさせたくないからな…」



花形 「…!」

(やっぱり、選手権監督はイヤだったのか!?)



藤真 「オレは、オレに出来る事を精一杯やったまでだ」



花形 「……」



藤真 「これからもそれだけは変わらない…」



永野・長谷川 「!」



高野 「…!」

(大学でも…頼りにしてるぜ)



花形 「……」

(やっぱり、この先藤真が敵になるなんて…やりにくいな)



キュッ



練習に励む後輩達を見つめる藤真



「……」

(頑張れよ。伊藤)







(来年こそ翔陽がNo.1になる年だ!)












同じ頃



ガチャッ



「お疲れ様でしたーーーっ!!!!」



後輩達の声を背に体育館を後にする2人の男







池上 「これで、本当に終わったな」



すっ



自分よりも遥かに大きな男の肩に手を置く



「……あぁ」



返事をする男の頬を涙がつたう



池上 「……」

(本当…魚住は涙もろいな…)







(それにしても、なんで魚住は卒業式に板前姿なんだ…)







神奈川トップクラスのセンターとして活躍したビッグ・ジュンこと魚住



その守備力の高さから「ディフェンスに定評のある池上」という異名?で他のチームに恐怖を与えた池上







この2人も陵南高校バスケ部に最後の別れを告げていた。



キュッ



田岡 「よし!練習に戻るぞ!」



「はい!!」



キュキュッ



練習に戻る選手達



「……」



「……」



2人の男が魚住と池上が出て行った扉を見つめたまま動こうとしない



田岡 「…!」

(仙道…福田…)







仙道 「……」



キュッ



しばしの沈黙後、何かを隠すように一瞬上を向き練習に戻る



田岡 「!」

(仙道…!)



ふるふるふるふる



ぶわっ



「うぐっ…」



涙を流しながら練習に戻る福田



この様子を見つめる田岡



「……」

(安心しろ…魚住)







(お前と叶えられなかった夢…陵南初の全国大会出場)







(今年、仙道と福田とともに必ず叶えてみせる…)












そして、












キュッ



「おせーぞ」



「…!」



あの男達も高校生活に最後の別れを告げようとしていた。







続く



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